ほんもんぶつりゅうしゅう
2015年02月01日
御先祖のおかげで
第4支庁・鎌倉 顕証寺 武田晴代さん
 
 
 昨年の佛立新聞7月号に『平成の大改修・本山大屋根瓦葺き替え・宝蔵新築工事』の特別局だよりとして〝旧瓦御有志者有縁の方ご一報を〟という記事が載りました。内容は、次に掲載のお名前は本堂草創時にご有志された方々で旧屋根瓦に浄書されてあり、約1200余名いらっしゃいます。これらのお名前に心当たりのある方はご一報下さい。名前の認めてある旧瓦を差し上げます。というものでした。もしかして、と名簿をさがすと、曾祖父の名前がありました。同姓同名の方がいらっしゃったという話は聞いたことがないので、間違いないと思い、すぐに本庁特別局に引き取りたい旨を伝えました。丁度、京都に帰る予定があり、引き取り日を約束しました。
 
 どんな瓦で、どんな字が書いてあるのか、とても楽しみでした。約束の8月5日、予定より早く京都に着いたので、本庁に今から伺って良いか電話したところ、「どうぞ、どうぞ。けど、武田さん、大変申し訳ないのですが、実は瓦を取り出す時に割れてしもうたんです。何分古いもんで。一度見てから、どうされるか考えてください。すみません」とおっしゃいました。会ったことのないご先祖に会える様な気持でワクワクしていたものですから、とても落胆しました。本庁に伺い担当者が持ってこられたのは、上半分だけの瓦でしたが、何とも言い様のない感激で目頭が熱くなりました。名字しか読めないのですが、この瓦を取り出して下さった担当のお教務さんが、同じ名字の方が3名いらっしゃいましたが、あとの2名は引き取りの連絡がありません。引き取りたいという意志に応えてこの瓦が出て来たのだから間違いないでしょう、と言って下さったそうです。
 
 私も最初に見て、これに間違いないと思いました。引き取られない瓦は当然のことながら処分されるそうです。しかし長年に亘り、大勢の方々が唱えられた、何千万、もしかしたら何億という数の御題目が染み込んでいると思うと、とても粗末には出来ません。丁寧に包んでくださった瓦を抱いて、本山にお礼のお参りをさせていただきました。仮本堂でしたが、間近に御本尊を拝見し、感慨一入でした。丁度この日は、本堂の上棟式があり、おめでたいことが重なった様でした。佛立新聞の9月号、10月号には、瓦を引き取られたご家族の方々の随喜の報告が数多く載りました。どの方の瓦も割れていません。やっぱり一枚が良かったなぁと思いましたが、我家の小さい御宝前にお供えすると、半分の大きさがちょうど良かったです。御法様、ご先祖様に守っていただいているという思いが一層強くなりました。
 
 夕方のお看経時に〝武田家家内一同昼夜御守護のお礼哀愍納受〟とお礼言上させていただきますが〝あたりまえ〟ではなくご住職に教えていただいた様に〝おかげ様で〟の気持ちを忘れないで、ご信心させていただきたいと思います。ありがとうございます。
 
平成22年8月発表