ほんもんぶつりゅうしゅう
2014年06月19日
「亡き曾祖母の信心見習い」—御講席主となった小3の乃音(のん)ちゃん—
第11支庁 三田・本有寺 中澤康子さん
 
 
 昨年12月、私の所属する組の御講を長谷川和子さんというご信者が席主になられる予定でした。ところが御講当日の朝、長谷川さんと同居する孫の渡部乃音(わたなべのん)ちゃんから私に電話があり「今日はよろしくお願いします」と言うのです。
 
 まだ小学三年生の乃音ちゃんの言葉を不思議に感じながらも「今日はいいお天気になって良かったね」と応えますと「お婆ちゃんと電話を替わります」と言って乃音ちゃんから長谷川さんに替わりました。そこで「本日の御講席主を渡部乃音に変更したいのですが、よろしいでしょうか」と言われ、ようやく事態がのみ込めました。もちろん私の一存では決められませんので「ご住職にご相談をします」と返事をして一旦電話を切り、ご相談申しあげました。私は「乃音ちゃんの気持ちも大切にしてあげたい」と申しあげました。ご住職はしばらくお考えになった後「宜しい」とご返事をくださいましたので、すぐに長谷川さんにお伝えし、小学3年生の渡部乃音ちゃんに席主の交代がなされました。
 
 しかし私は正直言って、果たして御講が無事に勤まるのだろうかと心配でなりませんでした。乃音ちゃんのお母さん、良子さんのお話によりますと、実は数日前から乃音ちゃんが御講席主になれるようにいろいろと準備していたということでした。御講当日も、朝早く起きて御宝前のお磨きお給仕をして、お昼の御講のためのお花やお供え物についてもお婆ちゃんに指導を受けながら1人で済ませたと聞き、驚きました。御講席の意味も理解できないだろうと思っていた小学生の子どもさんが、何故ここまでできるのか不思議でなりませんでした。
 
 やがて御講の時間が近づいてきますと、組内のご信者が次々とお参詣になりました。予め知っていた私は別として、他のご信者は皆、席主変更をこの時初めて知りましたので、とても複雑な表情をしていました。やがてご住職がお見えになり、席主の乃音ちゃんは玄関先でお迎えをしました。私が教えてあげたとおりにご挨拶やその後のお給仕をちゃんとしてくれました。礼儀正しくキチンとした姿に皆さん驚いていました。数年前まで甘えん坊だった乃音ちゃんの成長ぶりに渡部家の雰囲気もすっかり変わったように感じられました。
 
 御講が始まってからも乃音ちゃんは姿勢よくハッキリと御題目の声をあげ、最後のご挨拶もお布施のお供えも、見事にその役を果たしてくれました。御法門でご住職から乃音ちゃんにお褒めの言葉をいただきました。そして、次は大きくなってからまた席主になりなさいとご指導下さり、無事に御講を終えて、ようやく私の緊張は解(ほぐ)れたのです。
 
佛立開花運動を展開させていただく中で、本有寺では、
 
1)お寺にご利益の花を咲かせよう
2)組内に喜びの花を咲かせよう
3)我が家に佛立信心の花を咲かせよう
 
この三つをテーマにご奉公が展開されています。そんな中で私の所属する本有寺第4信力組に、小さな信心の花が咲いてくれました。そして、まだ初心信徒だった渡部家、長谷川家にやっと佛立信心が芽生えたことを実感しました。
 
 御講の数日後に渡部家にお助行にまいりました。そこで乃音ちゃんに話を聞きました。
「どうして突然、御講席主になりたいと思ったの?」
と尋ねますと、亡くなったひいお婆ちゃん(氏原梅さん)のことを話してくれました。4年前に95歳で亡くなった氏原梅さんは、毎年12月に御講席主になられていました。そのお手伝いをしながらチョコンと座って御法門も聞いていた乃音ちゃんだったのです。
 
 ひいお婆ちゃんは
「御講席主にならせていただくと必ずいいことがあるよ」
「お願い事も叶えていただけるんだよ」
と話をしてくれていたのでした。このことをしっかりと覚えていたからこそ、今回の御講席主になりたかったと話してくれました。
 
 乃音ちゃんには、将来お医者さんになりたいという夢があり、お母さんも学校の成績も上々で勉強好きだから応援してあげたいとのことでした。
「乃音ちゃんの大きな夢が叶えられるように、御宝前様にしっかりとお願いしましょうね」
と心から励ましてあげました。
 
 渡部家で一番信心が強いのは、実はこの乃音ちゃんです。ですから乃音ちゃんに
「今日はお寺に行こう」
と言われると、仕事で疲れたお母さんも仕方なくでもお参りしてくれます。乃音ちゃんの大きな願いが叶うように、皆がもっとたくさん御題目をお唱えしてもらいたいと願うばかりです。そして、欲を言わせてもらえるならば、乃音ちゃん姉妹に薫化会でも頑張ってほしいと思います。薫化会のお友達とも仲良くなって、積極的に楽しんでもらいたいですし、お母さんには薫化会スタッフの一員となってお寺の薫化会発展に力を発揮してほしいと思っております。これは組長としてお寺の弘通部長としての私の切なる願いです。どうぞ皆様にも、この小さなご信者の佛立信心の芽がしっかりと育ちますように、ご協力をお願い申しあげます。