ほんもんぶつりゅうしゅう
2024年04月01日
5支・遠妙寺 フィリピン教区念願の教務誕生
2月12日、当山第5世・木村日覚導師を師僧にいただきレオナルド・マティリン・ジュニア氏が出家得度いたしました。フィリピン教区の念願であった現地信徒の得度です。
昨年6月より始まった教務見習い。日本出身の方でも厳しい道のりですが、キリスト教国フィリピンの出身でご奉公の経験もまだまだ豊富ではない人となりますとより厳しくなります。色々な葛藤があったことと思います。また、壁にぶつかったこともあったはずです。
しかし、当山教講に支えられ、守られ、育てられ、本人も御宝前に一生懸命ご祈願させていただき、そして迎えた得度式。当日は晴天のお計らいに恵まれ、本堂一杯のお参詣者がお唱えする御題目の中、御剃刀をいただき「彰勇師」が誕生いたしました。
フィリピン教区の歴史はもうすぐ15年を迎えます。数年前の混乱により10周年の折は何もできないまま見過ごすことになってしまいました。本当に残念で、やるせなく、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。今でもその影響は色濃く、ご奉公体制は整わない状況にあります。日本のようなしっかりとしたお役中が育っておりません。何より常在のお教務がいません。貧困の問題も相まって、担当教務が渡航している時以外はご奉公がストップしてしまいます。
そんなフィリピン教区のご弘通をより盤石なものにし、より発展させるのに現地信徒の得度は欠かすことのできない重要な課題でありました。ですが、昨年の佛立新聞12月号に掲載された本人の言葉の通り、数年前は彼も先の混乱に飲まれ今とは全く違う心境でした。そんな彼が発心し、無事に得度式を迎えられたことは大変ありがたく、御宝前のお計らいを頂戴したものと感得いたしております。
見習いご奉公の終盤、師僧・木村日覚導師、当山御住職との最終の面談(この日、得度のお許しを頂戴しました)を控えた彰勇師にその志を尋ねると『私の人生はみ仏に捧げました。ご信者さんにご信心のありがたさを掴んでほしい。フィリピンの人たちにご信心で人生を変えてほしい。それが私の望みです。個人的な願いというものは特にありません』と申しておりました。
その言葉の通り彰勇師は何よりもお助行が好きです。どうも早く現地のご信者宅を回らせていただきたいとうずうずしているようです。でも…ちょっと待ってくださいね。まだまだ習得すべきことはたくさんありますから。
この度の得度式、残念ながら行政などの都合で家族の参詣は叶いませんでした。彰勇師の実家にお母さん(父親はすでに他界しております)と親戚が集まってYouTubeでの中継を視聴するかたちとなりました。お寺のないパナイ島、本堂を見るのも、得度式を見るのも初めてです。
ずっと彰勇師のことを心配していたお母さん。現地を訪ねた際も多くを語りませんが、自分も行ったことのない外国に息子を1人で送り出す気持ちが痛いほど伝わってまいります。法要が終わりお母さんや兄弟に電話をすると「厳かでとても立派だった」とおっしゃっていました。少し安心いただけたようです。
まだまだ課題は盛りだくさんのフィリピン弘通ですが、彰勇師も言うように、たくさんのフィリピンの方に御題目のありがたさを感得していただくよう、さらに強力にご奉公に励ませていただく所存です。