ほんもんぶつりゅうしゅう
2019年05月01日
このよろこびをあなたとともに 体験談 我が罪障に励まされ 膝の痛みやわらぎ肺の影が消える 第9支庁 松風寺住職 吉田日景
ありがとうございます。
昨秋より新たなご奉公に挑戦する機会をいただき、初心に還って臨もうと努めておりましたところ、いろんな罪障が現れて、早速にご奉公の功徳を頂戴したものと随喜をさせていただきました。そんな、ささやかな体験をお話しさせていただきます。
昨年の暮から、体調の不良が続いていました。50代も半ばにくると、こうも変調をきたすものかと驚きました。最初は右膝の痛みです。私の若い頃は、長時間のお助行も正座が常で、高齢になって膝を痛める先輩もいらっしゃいました。
そこで私は、足が衰えないようウォーキング等も心掛けてはいましたが、秋に入る頃から長く歩くと膝が痛むようになり、11月に韓国の講有巡教に随伴させていただいた際には、空港等で人の流れについて歩くことも困難になりました。
帰国して、近所の整形外科を受診しました。レントゲン検査の結果は骨に異常はなく、シップと炎症止めを処方されました。しかし、状態は一向に改善されず、むしろ悪化をしていきます。
年末に別の整形外科を受診すると、軟骨が減る病気で、治らないので悪化しない治療をしましょうと言われました。この日、初めて膝にヒアルロン酸の注射をしました。こうした診断や治療は、高齢者のものだと思っていましたので、大きなショックを受けました。
ヒアルロン酸の注射で、しばらくは痛みも和らぎましたが、3階の本堂への出仕はもちろん、日々のご奉公で足を使わない日はありません。寒修行中は、階段の昇り降りも激痛が走るようになりました。ご信者にはビッコを引いている姿を見せまいと恰好をつけたので、右膝をかばった負担が右足の筋肉を硬直させ、正座ができなくなりました。
出張すると、空港や駅は意外と足の悪い人にやさしくないと気付かされました。そして、この年でそんなことを考える自分に嫌気がさし、もう子供たちと走れないのかと思うと絶望感を覚えました。
3月に入り、佛立教務大会のご奉公を迎えました。しばらく足をかばっていたため、正座が困難になっていた私は、本山の庫裏や本堂で正座をする機会があることに不安を感じていました。もちろん、足が不調であることは誰にも言っていませんし、言いたくもありませんでした。
なんとか誤魔化しながらご奉公を進めていましたが、2日目は300余名の教務さんとの口唱会を前に、本山の庫裏で講有上人のお出ましを待たねばなりません。迷った末、思い切って正座しました。予想したより痛みは軽く、なんとかお迎えの場は乗り切ることができました。
そして1時間の本山御宝前での大口唱会が終わる頃、私の膝の痛みは、ほぼなくなっていたのです。歩いても、階段の昇り降りをしても、膝に痛みがありません。正座も普通にできます。しばらく足をかばっていたので、歩き方のぎこちなさは残りましたが、大きなお陰をいただいたことに、心から感謝をしました。
まだ走ったり、長時間の正座も出来ません。膝に力が入ると痛みますし、足をかばう歩き方も残っています。しかし、医師は治らないと言われたのですし、一時のことを思えば、あれほどの激痛を我慢することはなくなったのですから有難い限りです。いましばらく、足のご奉公をさせていただける果報を頂戴したと随喜をしています。
ところで、私の変調はこれだけではありませんでした。私は毎年、年末に松山市医師会健診センターでドックに入ります。最近は、年齢相応に数値も悪くはなっていましたが、今回はなんと「右肺に小さな影あり」「肝臓にも腫瘍らしき影あり」「胃の形を変形させる存在あり」と3か所も「がんの疑い」が指摘されたのです。突然ですので驚きました。
私の家内の父は医師ですので、肺のCT画像を見て「これだけでは分からないけど、影が周りに少し伸びているね」と言います。近所の掛かりつけの内科医も、心配して診に来られた日赤の元副院長の先生も、特に肺の画像を気にされます。そこで、私も「そういうことか」と覚悟をしました。
腹を括ると不思議と動揺はなく、穏やかに死と向き合えたのは、いろんな方の臨終に学んできたお陰と感じました。ただ、いま臨終をすると、あちこちに迷惑をかけます。宗門のご奉公は、代わって務める優秀な人材がたくさんいらっしゃいますが、自坊は私が抜けると困ることが多く、我が家も就学中の子どもが3人います。療養生活すら多くの人に負担をかけますので、もう少しご奉公をさせていただけるよう、しっかりと口唱に努めようと思いました。
ひとまず、放射線の被爆量の関係等もあって、肺と肝臓の再検査は3月に決まり、1月の末に胃腸専門のクリニックで胃カメラの検査を受けました。診断は細胞検査も含めて「白」でした。
慌ただしく時間が流れ、佛立教務大会を終えた翌週、3月14日に松山赤十字病院で、7時間におよぶ精密検査を受けました。肝胆膵センターでは造影剤を入れたCT検査を行い、肝腫瘤と疑われた影は血管腫で、心配はないと診断されました。
続いて呼吸器内科の診断を受けたのですが、医師は「12月の検査のときは風邪でもひいていましたか」と開口一番聞かれます。「いえ、風邪はしばらくひいた記憶がありません」と答えると、12月の画像と当日の画像を見比べながら、「ここにあった影はありません。今日の検査では、肺の中はきれいです」と言われました。
驚きました。12月からの影の成長を診て治療方針を決めると聞いていましたので、影がなくなるとは考えてもいませんでした。12月の肺の画像は、5人の医師が診て同じ判断をしたのですから、私がそれを疑う理由はありません。
ご利益談で「がんの影が消えた」とあるのは、こういうのを言うんだなと、なぜか客観的に医師の説明を聞かせていただき、診察室を出てから、大きなお計らいをいただいたのだと実感させていただきました。
新たな功徳行に挑戦するとき、身に潜む罪障が現れるのは常ですし、その消滅に努めて自身の果報を増すのがご信心の筋でもあります。昨秋より新たなご奉公を努める中で、罪深い自身の果報に気付かせていただき、「無常を知って、いまできるご奉公を精一杯せよ」と誡めていただきましたことは、御法さまの大きなお慈悲と感得させていただきました。
もとより信心未熟で、日中は自分のためのお看経をさせていただく時間もあまりありませんので、就寝前に30分、一千遍の罪障消滅の口唱を続けただけではありますが、それでも御宝前からこのたびの現証を頂戴した意味を重く受け止め、日々精進をさせていただく所存です。
ありがとうございました。