ほんもんぶつりゅうしゅう

2023-02-06 09:00

YOKOHAMA LAGOON  今週のボーズワード 「快楽」

今回のボーズワードは快楽です。気持ちよく楽しい事や、欲望を満足させることを快楽を得る、なんて言いますよね。実はこれも仏教用語なんです。

元は「けらく」と読みまして、欲望を満たすことでなく、そうした欲の心から離れて、心が開放される様を指す言葉でした。

お経典には「是に於いて欲を離れ、不善行を捨つれば、歓喜を得て、心恬然(てんぜん)にして快楽なり」(長阿含經 佛陀耶舍譯 竺佛念譯 大正蔵経01巻36頁)とか「以て身の善行、口意の善行をせば、便ち快楽を得ん」(起世經 闍那崛多譯 大正蔵経01巻330頁)なんて、欲望を乗り越えて、悩みや煩わしさから心が開放され、気分良くなる様のことを指す言葉だったんですね。

時代が下るにつれ、だんだんと意味合いが変わっていき、欲望を満たすことで、悩みや煩わしさから眼をそらして、気分良くなる様を指す言葉に変わっていき、室町時代には、昔の中国の王様、殷の紂王が行った酒池肉林の様子を指して、「天上の婬楽快楽(いんらくけらく)も、是には及ばじとぞ見へたりける」(太平記 高倉殿京都退去の事付殷紂王の事)と、贅沢放蕩三昧して欲望を満たす事を快楽と呼ぶようになりました。

そのうち江戸から明治にかけて外国の文化が入ってくると、感覚的な幸福という意味になり、「かいらく」と読み方もかわって、今の意味になったようです。

もとの意味を見ていくと、欲望を満たすということとはまるで反対の、欲望に振り回されないで、本当の意味で心のままに過ごせる状態を指す言葉です。

開導聖人の御教歌に「壱尺の 楽しみ得んと 十丈の くるしみをする これが煩悩」(十巻抄 三 如説抄拝見 扇全14巻426頁)とあります。欲望を満たす楽しみは、その時は、何もかも忘れて楽しめるけれども、後々、もっと苦しいツケを払わされる元となると教えてくださっています。先程の話に出てきた殷の紂王も、贅沢三昧で一時の楽しみを得た結果、国を滅ぼして三千年経っても消えない悪名だけが残り続けることになりました。

一時の快楽に流されず、自分の心をコントロールできる。本当の「快楽」を楽しめる一週間を。

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