ほんもんぶつりゅうしゅう

2023-12-06 16:42

京都アニメーション公判の記事から思うこと。『憎しみは憎しみによっては止まず』


京都アニメーション放火殺人事件の公判が続いています。

11月29日、犠牲者の方のご遺族が被告を前に現在の心情をお伝えになったという記事が目に止まりました。
特に亡くなった池田晶子さんのご主人の言葉は心に突き刺さりました。

ぜひご覧いただきたいです。
「あなたを許すことができると思いますか」 京アニ公判、遺族が訴え
https://mainichi.jp/articles/20231129/k00/00m/040/158000c?fm=line

被告のことを「さん」づけ呼び、涙で言葉につまりながらも丁寧な言葉でお話しされていたことが報道されています。冒頭の言葉が以下です。

「最初にこれだけははっきり言っておきます。私たちはこのような事件では負けません。必ず、はい上がって乗り越え、より前に進みます。特に息子は、逆にこの事件を糧にして、事件前の状態に戻すだけでなく、前を向いて、いつか心の底から笑えるようになります。つらかった時もあったけど、あの時頑張ったから今があるんだよね、と言えるように。息子を一人前の人間に育て、社会に出た時に胸を張って生きていけるようにすることが、私の絶対的な責任です。それが、晶子に対してできる供養の一つだとも思っています。妻を母親を殺されても、私たちは不幸な人間にはなりません。不幸だと思うことが不幸ではないでしょうか。もっと不遇を強いられている方はおられます。私たちは恵まれていると思ってます。」


どれだけの憤り、憎しみ、苦しみを超えてこられたのか想像を絶します。
その中で奥様の生き様と向き合って、ご子息とご自身の将来を見据えた、決意のようなものを感じました。

事件当時、息子さんは小学二年生だったそうです。
その息子さんはお母さんを失った悲しみと向き合いながらも「ママは天国で生まれ変わる準備をしている」と笑顔で話をしているそうです。

息子さんに対してご主人は、裁判については専門家が出す結果を見守ろうと話をされているそうです。一方で、息子さんに「青葉さんの方を向くのではなく、自分自身のことを見よう。自分を鏡に映して見た時に、目標に向かって前向きに頑張れているか。人を恨むことをしてはいけない。夢や希望を自分の努力でかなえた時が、青葉さんにされたことに打ち勝ったことになる」と話していると述べておられます。

この部分だけ切り取って紹介するだけでは正しくお伝えしたことにはなりませんが、あまりにも理不尽な事件の被害者のご家族の、これだけ言葉に胸が熱くなり、涙が出てきました。

被告の生い立ち、境遇に不幸な部分もあったことも報道されています。それも認めながらも、その苦しみを悪意に替えて他人に向けるものではなかったと語っておられます。


ご主人の言葉を読み返すにつきブッダの聖句が思い出されます。
「憎しみは憎しみによっては止まず、ただ慈悲によってのみ止む」


やられたら、やりかえすでは永遠に憎しみの連鎖は断ち切れない。本当の勝ちとはならない。
本当の勝ち、人生の価値とは何かを教えてくださいます。世界を見ても、日本の中でも、憎しみの連鎖が渦のようになっています。

事件で犠牲になられた方の御回向をさせていただき、遺された方が前を向けることを祈っています。