ほんもんぶつりゅうしゅう
2014年01月08日
60年会っていない姉の葬儀で——帰寂2ヶ月前に入信し納骨も叶う
第8支庁・信照寺 加○隆久
 
ありがとうございます
 
 私は、函館信照寺の事務局でご奉公させていただいている、加○隆久でございます。この度は、東日本大震災で被災し、仮説住宅で生活していた妻(由紀子)の長姉=宝ほう○昭子が癌で去る8月6日80歳で亡くなりましたが、亡くなる2ヶ月前に佛立宗に入信し、尊い御題目で寂光へ送らせていただいた喜びをご披露させていただきます。
 
 私はお寺のご奉公の都合で葬儀には行けませんでしたが、妻が次兄と次姉と共に、宮城県気仙沼市の葬儀に行って参りました。
 
 さて話は遡さかのぼりますが、妻の実家は函館から車で2時間ほどの上ノ国町の田舎にありました。妻は男3人、女6人の9人兄弟(姉妹)の八番目、この度、亡くなった長姉・昭子とは12歳離れておりました。妻が11歳の頃、昭子は家を出てどこかへ行ってしまい、その後、音信不通となって行方が分からなかったのですが、数年前に次兄の所に電話があって始めて居所の知るところとなりました。
 
 今年7月頃、気仙沼の病院の医師から次兄へ電話連絡があり、昭子が肺癌により入院治療中で、今のうちに会っておいた方が良いとのことでした。とりあえず、次兄のみ気仙沼へ赴き様子を見に行きました。そのときの話によりますと、病状はかなり進んでおり、予断を許さない状況だったそうです。
 
 昭子は一人暮らしでしたが、大震災被災後は友人のところでお世話になり、その後しばらくして仮設住宅へ移ったそうです。その際知り合いだった周囲の方々の中にご信者がおられ、その方の尽力で仮設住宅に入れたそうで、多くの皆さんに暖かく迎えられ、闘病生活を送っていたようです。
 
 そんな中、今年8月6日、お世話をいただいている方から次兄のところへ亡くなったとの連絡が入りました。妻は当初、姉妹とは言え60年近くも会っていない他人同様の姉の葬儀には行かないと言っておりましたが、私が「どのような理由であっても姉妹なのだから、最後を一人でもいいから御題目で送ってあげなさい。」と説得、葬儀に向かわせました。
 
 昭子が住まいをしていた仮設住宅を始めて見た妻は、よくこんな暗くて狭く息の詰まるような所で生活していたんだ、と当人の苦労を思い、涙が出てきたといいます。葬儀は、市内の葬儀場で営まれましたが、始まる前にお手伝いの方同士の会話で、「お導師がご奉公で仙台から来られるので遅くなるんだって・・・」という声が聞えました。「お導師」「ご奉公」・・・うちのお寺と同じことをいう宗旨もあるんだなあと思い、その女性に「何宗ですか?」と聞くと「日蓮さんの御題目の宗旨で南無妙法蓮華経と唱えるんですよ」という返事。
 
 その後、お導師がみえられ、控え室での関係者との会話を聞いていましたら、故人が函館方面の出身とのことで、函館信照寺や實成寺のことなどを詳しく話されていましたので、びっくりしてその中に入り、「私も信照寺の信者で加○といいます。夫はお寺でご奉公させていただいています」と話しました。お導師は「よく知っていますよ」と言われて名刺まで頂戴しました。まさか、長姉が信者になっていたとは、夢にも知らず大変驚いたとのことでした。
 
 早速そのことを私に携帯メールで知らせてくれました。私は、折り返し小原御導師は青森青松寺の前御住職で、今は一関一乗寺の御住職としてご奉公され、その他2カ寺の担任をされていることを話しました。
 
 聞くところによりますと死を覚悟していた昭子は、死の2カ月前にお世話いただいていた中の複数のご信者に「みんなと同じ納骨堂に入りたいので、信者にしてもらいたい」と希望して入信したそうです。入信の動機はどうであれ、60年近くも他人同然だった長姉が、私どもと信心という見えない糸でつながっていたとは、ただただ驚いております。これもひとえに御法様のお計らいと気仙沼清護寺のご信者皆さまの渾身的なお心遣いがあったればこそ、素直な気持ちで入信できたのだと思います。
 
 また、納骨については前述のように故人が清護寺への納骨を希望していましたが、関係者で話し合の結果、兄妹の居る函館へ連れて行くことがいいのではないかということになり、8月26日気仙沼のお二人の方に抱えられて函館に到着、信照寺霊堂(納骨堂)に無事納鎮されました。
 
 もしも妻が葬儀に行かなければ、入信していたことは分からず、函館に連れてきても、どこか他宗の寺に納骨されていたかも知れません。昭子は亡くなってから大きなご利益をいただいたと思っております。このことを信照寺の夏井日韻御導師にお話したところ、機会をみてご披露してくださいとのお言葉でした。
 
 また、昭子が入居していた仮設住宅の周辺では、現在佛立宗に感心を持っている住民が増えつつあり、話題になっていると聞きました。ぜひご弘通の発展につながっていくことを祈念しております。
 
 最後に小原日諭御導師には、入信間もない昭子に立派な法号授与と葬儀を執行していただき、この紙面を借りて心から御礼申し上げます。ありがとうございました。