ほんもんぶつりゅうしゅう
2025年06月02日
海外弘通だより~韓国編 鶴松寺門祖会奉修に合わせて ご信者宅へのお助行や打ち合わせなどを行う
2012年に開教百周年を迎え、ブラジル教区と同じく長い歴史を有する韓国教区。
 この度、鶴松寺の門祖会(併・初灯明料奉納式、信徒研修会)奉修に合わせ、ご信者宅のお助行、打合せなど現地を訪問して参りました。
 ご弘通ご奉公には様々な問題がつきまといますが、その中に、国ごとに異なる特有の問題と、世界共通の問題がございます。韓国も例に漏れず、その100年を越える歴史の中で、戦争や政治をはじめ様々な要因に振り回されてまいりました。
 ソウルに到着した3月14日、韓国はちょうど大統領の弾劾裁判の最中で「憲法裁判所」周辺では連日連夜、大規模なデモが行われており物々しい雰囲気に包まれていました。
 国政は明確に右派(与党・資本主義・親日)と左派(野党・共産主義・反日)に分かれていて、あまりにも分かりやすいためか、支持政党が違う者同士が時に激しくぶつかり合うこともあるそうです。中立という立場も取りにくく、デリケートすぎて家庭や職場では話題にできないと聞きました。
 右派には、自由な信仰や多国間での自由な交流を尊重する人が多く、左派の共産主義政権で想定される信教の自由の侵害を危惧しているそうです。
 その緊張感のもとになるものを垣間見たのは鶴松寺に近づいた時に「ここからあと2時間北に行くと境界線です」と言われた時です。ここにもご信心をさせていただく環境の違いを感じました。
 また、ご奉公の現場には宗教的な背景も関係してきます。
 韓国は仏教徒の多い国ではありますが同じくらいキリスト教が流行っており、街中に教会が建ち並んでいます。人々の信仰のベースは、東南アジア特有の日和見的信仰と言えるでしょう。
 韓国仏教の最大勢力は曹渓(そうけい)宗。信徒は念仏を唱え、一方で僧侶は禅を組んだり戒律を守ったりすることを主としていて、それ以外は占い師のようなことを生業としているそうです。
 そういう土壌があるせいか、自宅に御本尊を奉安いただくことへの意識が低いとのこと。
 他にも、日本でもしばしば問題になりますように、佛立信心を創価学会と誤認されがちで、韓国の人々も創価学会にはかなり嫌悪感を抱き警戒しているため、初信の方は家族や友人への説明に苦慮しているそうです。
 他にも問題や課題は挙げればキリがありませんが、あらためて感じたことは、世界の各所で佛立教講が様々な困難に向き合いながら、上行所伝の御題目のご弘通に励んでおられるということです。そして、そうやってご利益を顕しておられるということです。
 今回、お助行に伺ったお宅は、みなさん信歴数十年のベテランで、ベテランという言葉に見合うべく、御題目口唱に徹してご弘通されてきた方々でした。
 数十年前ということは、先ほども申し上げた日韓関係など政治的な問題が今以上に難しかったことと思います。
 そういう中を、同じ御本尊に向かい、同じ御題目をお唱えし、お寺を護持されてきたという有難い方々でした。
 その中のお一人、李(イ)旼(ミン)修(ス)さん(80歳)は、まさに信心第一という言葉の似合うご信者で、これまで多くの方をお教化されています。約6年前から新清寺に住み込んで、毎日、御宝前へのお給仕やお看経をされています。また、老朽化した建物の修繕や、冬季の配管凍結防止など、お寺の維持管理にも日々尽力されています。
 自身がご信心を始め、一生懸命お仕えしてきた御宝前を、住み込んでお護りされる気持ちは筆舌に尽くしがたいものがございます。
 以下はお助行に伺った際に「これまでいただいたご利益の中で特に思い出に残っているものは何ですか?」とお尋ねした際のお話を聞き書きしたものです。
〈以下、ご本人の談話〉
 『私は27歳のとき、佛立第18世日地上人が御衣をお召しになっているお姿を拝した際、「目の前に仏さまがいらっしゃった」と強く感じました。その時、「一生お持ちしよう」と心に決めたのです。
 信心を続けるうちに、「一生、朝参詣を続けられますように」と祈るようになりました。
 今、こうしてお寺で毎日、御宝前にお給仕やご奉公をさせていただけることは、その願いが叶えられた結果だと、心からありがたく思っております。
 これまで数多くのお計らいをいただきましたが、とりわけ印象深いのは、中国で暮らしていた息子家族が、突然理由もなく会社を解雇され、帰国を命じられたときのことです。
 その知らせに、家族一同「これからどうなるのか」と途方に暮れましたが、私はとにかく御宝前におすがりするよう息子夫婦に伝え、韓国と中国両方でご祈願に励ませていただきました。
 すると3日目、突然、韓国の王手電子会社LGから連絡がありました。ヘッドハンティングです。まさかの出来事に大変驚くと同時に、御題目口唱の功徳の大きさを家族皆で実感することができました。以来、息子の妻も信心を深め、しっかりご信心に取り組んでおります。
 また、次女がうつ病を患ったこともありました。その際も、家族みんなでご祈願に励みました。 現在も薬は服用しておりますが、元気に働けるまでに回復しております。
 私はいつも家族に「御宝前にお願いすれば、必ずよい方向に導いていただける」と伝えています。
 その娘の長男はオーストラリアでの留学を終え、現地の薬局で働いており、まもなく同じ薬剤師のベトナム出身の女性と結婚する予定です。
 これからも家族みんなにしっかりとご信心を伝え、法の灯を繋いでまいります。
 最近は、教化の難しさを感じることもございます。それでもなお、ありがたいお計らいをいただけるよう、口唱とご奉公に励んでまいります。』
 李さんの決定の信心に心から随喜させていただきました。
 ご奉公に励もうと志を起こした時こそ、色々な問題が起こったり、思ってもみなかったような出来事に苛(さいな)まれることもありますが、根本は私たち自身の罪障と教えていただきます。そこに向き合うことは、時に辛かったり、葛藤したりいたしますが、御題目口唱に徹して、ご奉公に励ませていただけば必ずお計らいで乗り越えられる、この普段から御法門で学ばせていただいている教えを、世界でたくさんの方が実践されていることを知るにつけ、勇気を頂戴し、「まだまだこれから!」と思えるようになります。
 そんなまっすぐな信心を学ばせていただく有難い訪問になりました。