ほんもんぶつりゅうしゅう
2024年07月31日
次期講有の推戴をお受けして 木村日覚
本年3月8日、本山宥清寺における講有推戴会議により、不肖が次期講有・本山宥清寺住職に推挙されました。その結果、7月2日に第26世講有髙須日良上人より佛立開導日扇聖人のご遺嘱を伝承させていただくこととなりました。
 小職は至って信心未熟であり、行学において秀でておられる方が他に数多ある中、図らずも推戴されました事は誠に恐縮の至り、身が引き締まる思いです。
 今、日本のみならず、世界中が多事多難で、未曾有の出来事が起こっています。宗内も昭和の高度成長期は飛躍的にご弘通発展したものの、失われた30年とともに乗り越えなくてはならない問題が山積していて、将来に一抹の不安を覚える中、果たしてその任に堪えうるか否か、自問自答し複雑な境地にあります。
 しかし、この時に当たって推戴されたことは、偏えに御宝前の御命をいただいたものであり、ここが正念場と覚悟して、「身軽法重、死身弘法」とある通り、御宝前に命を捧げ、ご奉公させていただく所存です。
 この上は何としても御宝前よりご加護をいただけますようご祈願し、講尊・日良上人はじめ諸先輩の御導師方のご教導を仰いで、宗内寺院教会・全教講各位が一丸となって、異体同心のご奉公が成就できますようご協力を切に願う次第です。
 さて、昨年を以てコロナ禍のために1年延長した高祖ご降誕800年慶讃ご奉公が円成し、本年3月宗会開会にあたり本山御宝前において奉告法要が厳修され、褒賞規定に基づいて、多数の各号該当者が表彰を受けられました。
 誠に結構な事と随喜させていただいています。しかし、大事な事はその随喜の輪を拡げ、その慶びを元にさらなる報恩ご奉公に繋げていく事です。
 申すまでもなく、来たる2031年・令和13年は高祖日蓮大士750回御遠諱です。今年から来年にかけて決定されるであろう基本構想をもとに次期宗務総局によって、いよいよ750遠諱報恩ご奉公が開始されることを宗門人は等しく待ち望んでいると存じます。
 今、気候変動が大きな問題として世界中に暗い影を投げかけています。世界規模で気温は上昇し、ある国が豪雨に見舞われるかと思うと、別の国は干ばつに襲われ、飢餓により多くの途上国で子どもたちが餓死しています。
 また、平成以降、国内で巨大地震が相次いで起こり、本年正月元日には能登半島地震に襲われ石川県等に甚大な被害があり、なお、被災者の中には困窮している方もおられます。
 また、ロシアはクリミア半島を2014年に編入し、さらに一昨年2月に始まったウクライナ南東部を中心とする侵攻は今もなお、続いています。さらに、イスラエルとパレスチナの対立は、いっそう深刻さを増しており、ガザ地区に対するイスラエルの攻撃は人道上、問題があることは明白です。
 これらの争いの根本にあるのは、お互いの不信と憎悪に他なりません。
 また、日本でも世界でも分断化が進行しており、保守対革新、欧米対ロシア・中国など、対立が極端に先鋭化しています。これら分断の風潮が万が一、宗内に入り込むことがないよう御法様にお縋りしなくてはなりません。
 また、旧統一教会をはじめとする宗教と政治の癒着が問題化して、その矛先があろうことか、まともな宗教・信仰に向けられています。
 高祖日蓮大士は、如説修行抄に「正法に背き邪法邪師を崇重すれば、国土に悪鬼乱れて三災七難盛んに起れり」とお示しです。
 あらゆる災いの根源は、正法、上行所伝の妙法御題目のご信心に背く邪悪な宗教が蔓延り、それらを尊重する人々が国のリーダーである政治家、財界人はじめ一般人に大勢いることであるとお示しです。
 世の中に平和をもたらし人々を幸福に導く教えは、上行所伝の御題目のご信心に他なく、法華経本門八品に現れる世界観が万民に共有されてはじめて、この世が理想の寂光浄土と化するのです。その事は、エルサレムを発祥の地とする同根のユダヤ教、キリスト教、イスラム教相互の対立によって争いが繰り返されてきた歴史の事実と照らし合わせてみれば明らかです。
 近年、佛立の教えが世界に拡がりを見せて、ご弘通の火が赤々と燃えはじめていることは、それだけ世界に佛立の教えが必要とされている証しです。
 今より私がさせていただくべきことは、手自開眼の高祖御尊像を護持し、開導聖人が「清風がたましひのすゑ所」と仰せになった開導聖人の御魂がまします本山宥清寺御宝前において、御題目口唱に精励して、蓮隆扇三祖のみ教えを死守して正法興隆世界平和をひたすらご祈願する事です。
 そして、本門佛立宗をして佛立宗たらしめるアイデンティティは「妙法蓮華経の極意は、人を助けんと行ずれば我身をたすかると云ふ菩薩行也。是則此経の御本意也」(扇全14巻180頁)の教えにありますが、この御指南をもとに全宗内寺院教会の永続繁栄を期するよう訴え続けることです。
 さらに開導聖人が「異体同心は御弘通の基本也」(扇全14巻86頁)とお示しのように、「異体同心」を真の意味で実現しなくてはなりません。
 御宝前にお願いすべき事が山積していますが、「大地はさゝばはづるるとも、虚空をつなぐ者はありとも、潮のみちひぬ事はありとも、日は西より出るとも、法華経の行者の祈のかなはぬ事はあるべからず」(祈祷鈔・昭定679頁)の祖訓を体してご奉公させていただくことをお誓い申しあげ、ご挨拶とさせていただきたく存じます。
(次期講有 木村日覚上人ご略歴)
 昭和24年8月6日、東京遠妙寺・権大僧正・木村日玄上人の長男としてご誕生。昭和44年7月、遠妙寺にて木村日玄上人を師僧としてお得度。同50年に東京大学大学院を卒業して佛立修学校に入学。昭和52年より清風寺でのご奉公を経て昭和56年から遠妙寺に復帰、同61年遠妙寺住職就任。昭和63年から平成5年まで千葉妙導寺住職に就任。平成元年に上座講師、同16年に僧正にご昇晋。
 宗門では弘通局課長、企画室室員、開導百遠諱特別局主事、佛立研究所所長、教務局長、講有考試試験官、佛立教育専門学校校長等の要職を歴任。特に平成24
年から2期6年に亘り宗務総長として、開導聖人ご生誕200年慶讃ご奉公円成の重責を果たされた。
 現在も本宗参議、フィリピン教区長、佛立研究所常任理事、講有考試委員会委員、弘通審議会委員、海外弘通特別委員会委員として今日に至る。