ほんもんぶつりゅうしゅう
2023年01月01日
ブラジル特命巡教 高知・佛立寺 鈴木日樹上人 ブラジル教区 高祖日蓮大士ご降誕800年慶讃法要・併日教寺高祖会
コロナ禍が始まった2020年。本来、この年は、佛立第26世講有髙須日良上人にブラジルまでご巡教いただき、茨木日水上人の御50回忌法要をお勤めいただく予定でした。しかしご存じの通り海外渡航は不可能となり、御50回忌は史上初めて海外教区と本山宥清寺を生中継でつなぎ、オンラインという形で奉修されました。
 それからの2年間、ブラジル教区はなんとか日本からの巡教を実現しようと模索してきましたが、コロナ収束の時期が見えず、また海外渡航の規制も不安定なままでした。そのような中で浮かび上がった方策が、高祖ご降誕800年慶讃法要を特命巡教(御講有の代理としての巡教)として高知・佛立寺・鈴木日樹師にお勤めいただくというものでした。
 ブラジルのご弘通が始まったのは、いまから114年前、1908年に第1回の日本人移民船がブラジル・サントス港に到着したときに遡ります。その船に乗っていた1人の日本人教務、茨木日水上人が艱難辛苦の中、ブラジルでのご弘通を開始されたのです。同時にこれがブラジルへの仏教伝来でもありました。
それ以来、日本人教務が数年単位で交代しながら派遣され、ブラジル教区長としてご弘通ご奉公を続けてきました。その最後の日本人ブラジル教区長が鈴木日樹師です。鈴木御導師以降は、ブラジルに佛立信心が根付き、教務の育成が進んだことで、ブラジル人教務がブラジル教区長を歴任しています。
 さらに、現在の地にブラジル中央寺院・日教寺を建立したときのご住職も鈴木御導師です。ブラジル教区では本年、日教寺をより良い場所に再移転することを計画・推進しています。いまから42年前に現在の土地で起工式を行っていただいた鈴木御導師に、移転先の土地でもう一度、起工式を勤めていただくことも今回の巡教の大きな目的でした。
 鈴木御導師は85歳。まさに身命を賭す、最後の訪伯になるかもしれないという覚悟でのご奉公。昨年10月25日から11月11日まで、長期にわたるご出張をいただきました。

新・ブラジル中央寺院・日教寺 起工式

 サンパウロ到着の翌日には、日教寺の移転先の土地の視察を行いました。イピランガ独立公園の近くにある広大な土地(約5000平米、1500坪)です。さらにその午後には、新日教寺移転実行委員会に出席をいたしました。
 実にこの移転計画は、法律による規制、資金による制約、移転へのタイムリミット、全ブラジル教講による合意形成など、困難を極めました。しかしブラジル教区は一致団結して御宝前に向かい奉り、四年間の紆余曲折の末、中央寺院にふさわしい「掘り出し物」に巡り会ったのです。
そして1822年のブラジル独立からちょうど200年の記念の年の11月6日、鈴木御導師によって42年ぶりの起工式が行われたというのは、まさに御法様のご采配としかいえないものでした。
 しかし移転に困難がなくなったわけではありません。コロナ禍、さらにロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けて、建設資材、工事費用が異常に高騰しており、現在の日教寺の売却資金ではまったくの資金不足となってしまいました。しかしブラジル教区一同はこれも乗り越えようと、現在「レンガ1個のご有志運動」と題し、建設費ご有志の勧募を始めています。

ブラジル教区高祖日蓮大士ご降誕800年慶讃法要

 昨年8月、ブラジル教区長のコレイア日友師師と鈴木日樹師は、11月に日教寺でお勤めになるブラジル教区・高祖ご降誕800年慶讃法要について打ち合わせをなさいました。
その際、鈴木御導師がブラジル教区の参詣目標についてお尋ねになると、コレイア御導師からは「800名です」とのお答え。それに対し鈴木御導師は「日教寺が800名ではいかん。1000名にしなさい!」と一喝。コレイア御導師は「有難いお折伏をいただきました。仰せの通りにさせていただきます」と答えました。
 それから約2ヵ月後の11月6日、日教寺の本堂はギッシリ満杯。参詣者が本堂外にはみ出るほどです。1045名の参詣をもって目標を成就されました。
 印象的であったのは、ブラジル教区の教講の間で、「お折伏(OSHAKUBUKU)」という言葉が飛び交っていること。ブラジル人信徒の菊池義治氏は、鈴木御導師に久しぶりに会うなり「一文無しだった私が、40年前に鈴木御導師にお折伏いただき、お折伏の通りさせていただくことでここまできました」とご挨拶されました。
鈴木御導師は40年前、菊池氏に「毎日朝参詣すること、組長のご奉公をすること」をお折伏され、菊池さんはそれをその通り実践されました。そして鈴木御導師の帰国後に事業で大成功され、現在はブラジル日系人の代表として、天皇陛下ご夫妻(現・上皇陛下ご夫妻)と面会・会食をされるような存在となっています。
またどのお寺に行かせていただいても「お折伏をお願いします」、「どうかお折伏いただきたい」という声が聞かれます。佛立開導日扇聖人は御教歌に「信なくば御利益もなし御利益は 折伏よりぞあらはれにけり」とお示しです。
ブラジルでは、お折伏をいただき、信心改良をし、ご利益をいただく(お折伏+信心改良=ご利益)という佛立信心の基本となる方程式がいまも息づいていました。この方程式の逆を言えば、お折伏がなければご利益もないということです。
今回、鈴木御導師のお折伏をいただいて、ブラジル教区の教講がどれだけの将引を積み重ねて1000名の参詣目標を成就されたのでしょうか。逆に現在の日本で「お折伏」という言葉がどれだけ〃活きた〃信行用語として使われているか、反省させられるところでした。

ご降誕800年慶讃法要終了後の本堂

 それ以外にも、ここには書ききれないほどのご奉公とドラマがありました。ブラジル滞在中に、日教寺以外にも八つの弘通拠点(お寺や別院など)への参詣、六軒のご信者宅等へのお助行がありました。そのほとんどが自動車での3~4時間かけての移動、国内線の飛行機での移動もあります。
ちょうどこのころブラジル大統領選挙があり、選挙結果に反対するトラック協会がストライキを起こしてトラックで高速道路を封鎖するということもありました。そして鈴木御導師と長松海外部長によるブラジル教務の修学塾(勉強会)もありました。
 しかしそのすべてのご奉公は85歳の鈴木御導師とともに円成されました。そこにはブラジルの教講の異体同心のご奉公がつまっていました。ブラジル教区の御導師方、御講師方、ブラジル教区理事長・大槻マリオ氏、次期理事長・植松氏ご夫妻、日教寺事務局長・東原氏。さらには巡教一行に手作りのご供養で迎えてくださった各寺院の婦人会の皆さまなど、ご奉公してくださった方々はここには書ききれません。
特に次期理事長の植松氏は、約10日間、ずっとずっと、朝から深夜まで御導師をお乗せして、運転のご奉公を苦い顔一つされずご奉公くださいました。日教寺移転の困難によってずいぶんお瘦せになった植松さん。しかし思い定めのご信心によってその困難を突き抜けられたのだと感得させていただきました。
 「我身をくだりて人を立て、徳は人にゆづりて苦労は我に引きうくるようにするを本因妙と申し候」
 この開導聖人の御指南を地で行く、たくさんのご信者がブラジルにおられました。ありがとうございます!