ほんもんぶつりゅうしゅう
2013年05月24日
ハワイ別院 三祖法要営まれる
去る5月19日(日)、ハワイ別院(オアフ島)にて講有巡教が営まれた。昨年11月の韓国布教区に続き、山内日開上人が佛立第25世講有就任後、2度目の海外巡教となった。当日は雨の予報を覆す晴天のお計らいを頂戴し、日本からの100名を越す団参者と共に、三祖〔日蓮・日隆・日扇聖人〕報恩の口唱の声が別院に響き渡った。

 前日18日にハワイ入りされた御講有上人は、到着された空港から直接ハワイ別院へ向かわれ、まずは安着のお看経。引き続き、ハワイアンメモリアルパーク墓地内にある、佛立宗の納骨碑前でご回向をされた。ハワイアンメモリアルパーク墓地は、急傾斜の山の景観と海を見下ろす絶景に挟まれる。この異国の壮大な風景の中に上行所伝の御題目が響き渡り、精霊を供養した。

 法要当日、本堂には日本からの団参者と現地のご信者が数多く参詣し、晴天のもと異口同音に御題目口唱の声が響き渡った。御講有上人の御法門の前には、今後のハワイ別院のご弘通ご奉公に活用していただくための資金、弘通交流費の下付が行われ、長谷川日堯プレジデント(住職)と植田静代事務局長が拝受された。同時に、この度の団参当番支庁であった第2宗務支庁一同からの御有志も、代表の支庁長・蔭山淳和師より手渡された。

 続いて植田日事弘通局長、長谷川日堯プレジデントによる挨拶が行われた。植田弘通局長は挨拶のなかで、近年宗門内の海外弘通が急速に発展する理由として、インタラクティブ(相互作用のある)でスピーディな情報交換が可能になったことが挙げられると述べた。ことにこれまで未開拓の地であったスリランカ、フィリピンなどの国では驚くべきスピードで弘通が延びていることを例にあげつつ、今後のハワイ別院の御弘通のためにも、この度の別院の参詣において日本からの参詣者が何か相互に良い影響を及ぼすべきであると語りかけた。常夏の国に咲き乱れる花々のように、平成29年の開導聖人ご生誕200年に向けた佛立開花運動に掲げる「お教化の花、正宗徒増加の花、役中育成の花」を、帰国後に咲かせようではないかと、熱い御弘通の想いをご信者に対して述べた。

 長谷川日堯プレジデントは挨拶の中で別院の歴史に触れ、その建築物はもともとハワイ王国第4代国王、カメハメハ4世の妃、クイーン・エマのサマーパレス(避暑地別荘)であり、そのクイーン・エマの侍従の住まいでもあったと紹介した。実際に、現代建築の建物に比べると、屋根細工などは今では再現できないものが使われており、屋根自体も高く、大変趣のある造りになっている。築は約100年になるという。

 法要の最後には御講有上人より御法門が説かれ、現世において人という役柄を演じている我々お互いは、上行所伝の御題目を我も唱え、人にも勧める佛立菩薩行に精進し、未来は役が仏に変わらなければならないと語られた。

 法要後には別院より参詣教務・ご信者一同に昼食の御供養が振る舞われたが、その際御講有上人は、法要開催の知らせを聞きつけた地元新聞記者による突然のインタビューを受ける場面もあった。最後には記念撮影が行われ、華やかなハワイ別院三祖会は無事終了した。



【御講有上人御法門】

御教歌
 たのしみや今の心が菩薩ならば
       未来は仏うたがひもなし

 現在の信心前が菩薩行に叶うようになれば、御経力、仏力をいただいて、成仏の大果報を得ることは疑いもない。仏祖の思し召しに叶う正しい信心前を身につけ、佛立菩薩行にどこまでも精進させていただくことが肝心と、お教えくださる御教歌です。

 本日の御教歌には御題が付けられており、

 「人間の役がはりの事」
 
とございます。

 役者というのはいろんな舞台で様々な役を演じるわけですが、我々は今こうして人界に生まれ、人間という役柄を演じています。人としての一生を送るというわけです。では未来(来世)は一体なんの役を演じるのか?

 我々がご信心をさせていただいている理由は、過去遠遠劫来〔かこおんのんごうらい=遠い遠い過去から積み重ねてきた〕の罪障(ざいしょう)を消滅し、現当二世〔現世・未来世〕のお計らい〔御利益〕を頂戴する、つまり現世安穏・後生寂光〔善処〕の果報を頂戴するためなのです。つまり、未来は仏に役が変わらなければならないのです。

 そのために、今生人界において菩薩としての修行をさせていただいているわけです。それでは菩薩とは一体なにか?仏教の世界では古来より「覚有情」という言葉があります。「覚」というのは「さとり」。「有情」というのは命のある生き物。我々は人間としての命をもって誕生をしたわけですが、ただ持って生まれた本能、欲望のままの生涯をおくったのでは、覚りを目指す有情ということにはなりません。覚有情というのは「上求佛道下化衆生(かみ仏道を求め、しも衆生を化す〔天台大師『摩訶止観』『法華玄義』〕)」ということで、自らは向上心をもって菩提を求め、菩薩として仏道を極める、そして同時に未だその域に達していない人たちに救いの手をさしのべて菩提へと導いてあげること。この自行化他の菩薩行に励ませていただいて、はじめてその行が成就する、つまり仏道を極め、成仏に達するのです。

 開導聖人は本日の御教歌に続いて御指南をくだされております。

 「今の心が畜生ならば、未来は畜生疑(うたがい)もなし。すこい(せこい)ことするが上手なればがき(餓鬼)に役がかわる。おろかにて物の道理がわからぬ人は畜生に役がかわる。人に法を説て妙法を持たしむる菩薩が得て物なれば仏になる」
 
   冒頭に示しましたように、「人間の役がはりの事」と御題を添えられた本日の御教歌。因果の道理が理解できないのが畜生。人としての徳をそなえずに本能のままに生きる我身勝手な生き方をしていれば、将来は役が畜生に変わる。人を騙してでも自分が得をしたい、そんな考えで世渡りしていれば、将来役が餓鬼にかわる。我々はそうではなしに、上行所伝の御題目を我も唱え、人にも勧める教化折伏の佛立菩薩行に励ませていただき、成仏の大果報を頂戴しなければならないのです。今生ではこうして人間ではありますが、未来世では仏にならせていただくことができるのです。

 懈怠〔けたい=なまけおこたること〕をしているご信者、あるいは習損じに陥っている人たちにしっかりとお折伏をして、御法門を聴聞させる、ご参詣を勧める、御宝前のお給仕、御有志にきばっていただく等、罪障消滅、積功累徳を人にお勧めする行に励むことが大事。これが化他の菩薩行なのです。いまだこの御法にお出値いされていない方々には、その喜びを伝え、お薦めさせていただく。教化折伏の功徳を積んで、佛立菩薩道に精進させていただく。そのことがいかに大事かを御指南くだされているわけなんですね。

 先ほどの弘通局長の挨拶にありましたように、門祖550の報恩御奉公が無事に終わりまして、続く開導聖人ご生誕200年に向けた慶讃御奉公、佛立開花運動に、これから我々は精進していかなければなりません。これからの弘通の御奉公を担っていくべき若い世代の育成などは、現在宗門において最も大事な課題の一つであります。この意識を常に我々は心に懐き、どうすれば罪障消滅、積功累徳の菩薩行に励ませていただけるか、それを考え、行動することが大事なのです。