ほんもんぶつりゅうしゅう
2019年07月01日
イタリア開教20周年を盛大に奉修 講有巡教として日本からも40名が団参 サンマリノの式典では国会議事堂に招待され
去る5月15日から22日にかけて、本門佛立宗イタリア教区への講有巡教が実施され、19日にはメインとなるイタリア開教20周年記念法要が、香風寺フィレンツェ別院で奉修された。日本からも総勢40名の教講が随行団参させていただいたが、その一員である本庁弘通局主事・福岡清耀師に団参の報告をいただいたので掲載させていただく。

 団参者は関西国際空港から20名、羽田空港から20名の計40名で、今回の巡教は「御講有と巡る、奇跡の8日間」と題されました。
御講有上人のお慈悲をいただいて、なんとほとんどの行程で、御講有上人と同じ飛行機、同じバスに乗り、同じホテルに泊まり、同じレストランで食事をさせていただき、8日間ずっとご一緒させていただくという贅沢な旅。大変ありがたいものでした。

ローマの一日
5月15日夜にローマに到着。5月16日は、現地ガイドさんに歴史や文化、宗教についての解説をいただきながら、ローマ市街数ヵ所を巡りました。その中にはキリスト教の教会(バチカン市国にあるカソリックの総本山、サンピエトロ寺院)も含まれています。
本門佛立宗の信徒の方々なら当たり前のように認識していることと思いますが、他宗教の教会や寺院に参拝することは謗法として戒められています。しかし、このローマはキリスト教文化圏の圧倒的な中心地です。
私たちが泊まったホテルの客室には当たり前のようにキリスト教の聖人の肖像画が飾られ、私たちが乗車した大型バスのフロントミラーには当たり前のように十字架が掛けられています。そうした中で教えを厳しく受け止めれば、このイタリアという国、ローマという街に入ること自体が謗法ということになってしまいます。
しかし私たちが今回の旅で学ぶべきことは、こうしたキリスト教文化、キリスト教的思想が充満しているこの国の空気を知ること。そしてその空気の中で、自ら選んでキリスト教から改宗して本門佛立宗に入信し、日々御題目を唱えているご信者さんたちがいること。このイタリアという国で佛立宗のご信心をするには様々な困難があり、それを乗り越えて懸命にご弘通をされている姿に思いを馳せることです。
そうしたことを学んだ上で、19日、イタリアのご信者さんたちに対面したとき、その感動は違ったものになるのではないか…。団参の皆さまには、そのようにお話をさせていただきました。
このローマでの一日は、イタリアのご信者の皆さまのすごさ、深さ、貴重さを知る良い機会になりました。

サンマリノ共和国 国会議場での式典
 翌17日は、バスで5時間をかけてサンマリノ共和国へと移動しました。
 サンマリノは、イタリア半島の中東部に位置し、東京都大田区と同じくらいの面積の、世界で5番目に小さな、しかし美しい国です。世界最古の共和国でありながら、軍隊を持たずに平和を保持し続けてきた国としても知られています。
 今回この5月17日から、サンマリノ共和国の国会議事堂において京都佛立ミュージアムの館外展示『トランクの中の日本 戦争、平和、そして仏教展』が開催されています。
 この企画展は、終戦直後、原子爆弾が投下された広島、長崎を撮影したアメリカの従軍カメラマン、ジョー・オダネル氏が、想像を絶する悲惨さを目の当たりにした葛藤と共にトランクの中に封印していた写真を展示するとともに、仏教の平和性、本門法華経の教え、開導聖人の御教歌・御指南などを紹介するものです。
 サンマリノ共和国とのご縁は、2015年、京都佛立ミュージアムにおいて同展示が開催された際、その平和へのメッセージに共感したサンマリノ共和国大使館が開催に協力してくださったことに始まります。そしてそのとき展示された『焼き場に立つ少年』の1枚の写真を、2018年の元旦、ローマ法王フランシスコが、平和へのメッセージとして世界に配布するよう指示しました。そのことでこの写真はヨーロッパ中に知れ渡り、日本でも大きく報道されました。
 そしてこの年の6月、京都佛立ミュージアムはサンマリノの国会議事堂においてこの展示を開催しました。この展示はサンマリノ共和国の代表である執政官2名が見学に来られ、サンマリノTVでも放映されるなど大きな話題となり、約1ヵ月で5,000名以上の来場者を集めるなど、サンマリノ国内だけでなくイタリアやヨーロッパ各地に広くアピールしました。

サンマリノ共和国 国会議事堂での式典
 今回の『トランクの中の日本 戦争、平和、そして仏教展』は昨年6月の展示に続く第2回目です。その展示の記念式典に、御講有上人をはじめ、講有巡教団参者一同が招待をされました。
まず、サンマリノ共和国文化省において、御講有上人がポデスキ文化大臣と会談。続いて国会議場に場所を移し、団参者一同が議員席に着くなか、サンマリノ共和国の執政官(国家元首)と御講有上人が互いに謝意を伝えあいました(サンマリノの執政官は、独裁を防ぐため、常に2名置くと決められています)。
 第2次世界大戦の時、サンマリノ共和国はイタリアから10万人の避難民を受け容れました。国家の規模からしてあり得ない規模の人数です。しかし、サンマリノの人びとは国民全員が食べるものを3分の1に減らして、この方々を受け入れようと決議しました。
平和を保持すること、それを貫くことの困難さを知っているサンマリノだからこそ、京都佛立ミュージアム『トランクの中の日本 戦争、平和、そして仏教展』に共感し、ここまで友好が深まった… 執政官は、そのことを表明くださいました。
それに対する講有上人からの感謝状は以下の通りです。

感謝状
ニコラ・セルバ閣下
ミケレ・ムラトーリ閣下
終戦70周年の節目にあたり、貴国は原爆投下直後に撮影された少年の写真を中心とした京都佛立ミュージアム『トランクの中の日本 戦争、平和、そして仏教』展に対し、当初から惜しみない協力を与えてくださいました。
同国での2度に及ぶ写真展の開催はその最たるものです。貴国と私たちが掲げた平和のメッセージはローマ法王をも突き動かし、戦争がもたらすものを多くの人びとに知らしめることとなりました。
ここに人類の平和を希求する1人の宗教者として心から貴国に対し感謝の意を表します。
ノートルダム寺院の火災、スリランカの同時多発テロなど世界各地で戦争やテロが続いています。私たちは何としても憎悪の連鎖を断ち切らなければなりません。
平和の国・サンマリノと唯一の被爆国であるわが国がさらに友好を深め、世界の恒久平和に貢献することを切望します。
願わくはこの功徳を以て普く一切に及ぼし、我等と衆生と皆共に仏道を成ぜんことを。
本門八品所顕上行所伝本因下種の南無妙法蓮華経

2019年5月17日
本門佛立宗
第26世講有
   大僧正 髙須日良

 その後、国会議事堂の1階の会場へと移動し、企画展のテープカットが行われました。地元テレビ局のカメラクルーが取材に訪れており、御講有上人にインタビューしました。この日は、団参者にとっても大変貴重なご奉公の機会となりました。 
この日のご奉公の様子は、YOU TUBEから動画でご覧いただくことができます。
https://youtu.be/kf2GeoCVtus


フィレンツェ別院での開教二十周年記念法要
 翌18日には3時間半をかけてフィレンツェへ移動。19日には香風寺フィレンツェ別院において御講有上人ご唱導のもと、イタリア教区開教20周年記念法要が奉修されました。
 日本からの団参者40名に加え、イタリアのご信者さん75名で、限られたスペースに入りきらないほどです。本堂の半分を日本からの参詣団、半分をイタリア教区のご信者方に分けて着席しました。
 まずイタリア教区長の福岡日雙師から、ご挨拶とイタリアの主要なメンバーの紹介が行われました。担当教務であるダニエレ良誓師。事務局長は外科医であるティッツィアーノさん。学徒であるアントーニアさんとマリアピアさん。このご挨拶は、福岡御導師が英語と日本語を取り混ぜてお話しされ、それをマリアピアさんがイタリア語に訳すという形です。
 紹介をされた方以外にも、遠い南イタリアからこの法要のために4日間の休暇を取ってお参りされたご夫妻などもおられ、イタリアのご信者さんの随喜や熱い思いが伝わりました。私たち日本の信徒にとっては、生まれた時からお寺があるのが当たり前です。しかしイタリアの信徒にとってはそうではありません。
フィレンツェ別院は、自分たちが一から作り上げ、大切に護持しているお寺なのです。そこでの開教20周年を迎えることができたイタリア信徒の方々の喜びに、こちらも随喜をさせていただくことができました。
 そしてお看経に入ると、全員が、まさに「異口同音」に唱える『Namu 
MyoHoRenGeKyo』の御題目。イタリア教区の方々は無始已来も南無久遠も日本語で唱えられます。異口同音。これがなによりも大切な本化仏教の実践、「ユニゾン(一つの音・一つの声)」です。
さらに長松清潤海外部長からのご挨拶と御講有からの御法門はダニエレ良誓師が翻訳します。ダニエレ良誓師からのスピーチは福岡教区長のご息女・イタリア在住の麻樹さんが訳します。何もかもが記念すべき法要らしく、感動いたしました。涙を流している方もおられました。とにかく、無事に盛大に奉修されました。

学徒アントーニア宅へのお助行
 今回の旅の行程にはもともと入っていなかったのですが、法要の翌日、学徒であるアントーニアさん宅へのお助行を依頼され、御講有上人ご夫妻と長松海外部長、私の4人でお家を訪問させていただきました。
そのとき私たちを乗せて車の運転をしてくれたアントーニアさんの夫であるレンツォさん。彼は実は、かつて重いうつ病を患っており、何度も自殺未遂を繰り返すほどでした。そんなレンツォさんはあるとき知人から本門佛立宗を紹介され、別院へのご参詣をするようになりました。
みるみる表情が明るくなっていく夫の姿を不思議に思ったアントーニアさんが尋ねたところ「実は仏教のお寺に通っているんだ」との答え。驚いたアントーニアさんがフィレンツェ別院に行ってみると、そこにいたのはティッツィアーノ局長。実は彼はアントーニアさんの医学生時代の同級生だったのです。
不思議なご縁に導かれ、夫婦で入信したレンツォさんとアントーニアさん。ご主人はすっかり明るく元気になり、アントーニアさんは素晴らしい学徒になりました。そして、はじめは小さな御戒壇だったのが、仕事場を兼ねた自宅は庭付きのステキな家へと引っ越し、当然ながら御戒壇も大きく立派に荘厳されていました。
 不思議なご縁、まさに現証のご利益。つまるところ、イタリアも日本も同じです。お助行での喜びのお看経、あの南イタリアから八時間かけてお参詣のご夫妻と、アントーニアさんの家に寄宿しながら弁護士を目指して大学に通っている姪御さんも一緒に美しく御題目を唱えています。
 御講有にお助行していただくなど、ありえないほど貴重なことで、アントーニアさんも感激をしておられました。

そして帰国の途に…
 翌21日には日本への帰国の途に就きます。しかし、その日にちょうどイタリア全土で航空関係者のストライキが起こり、私たちの帰国便も大きく変更されてしまいました。ただ、関西空港組は御講有上人のお徳を頂戴し、奇跡的に到着時間の変更なく日本に到着。羽田空港組も、1日遅れながら、全員無事帰国、帰宅させていただきました。

 最終日にまさかのトラブルはありましたが、日本からの団参40名、みな異体同心・一致団結で全行程をクリアしました。団参者のみなさま、特に全行程でご一緒くださった御講有上人に心より感謝申し上げます。
 ありがとうございました。
弘通局 福岡清耀記