ほんもんぶつりゅうしゅう
2021年12月01日
講有巡教 高祖会をライブ配信  中国布教区合同の慶讃法要も併修
今を、さかのぼること3年。
翌年に講有巡教を控え、少し緊張した面持ちで、「そろそろ準備を」と考えていた小寺の住職・池本日温。この狭い本堂や境内に、布教区から大勢のご信者がお参りされる様子。さらに終了後、別席でご講有上人を囲み、管内寺院のご住職が和やかな雰囲気で御供養の宴が開かれている様子を想像していた。
 近い未来にとんでもない事態がやってくることも知らずに・・・

 年が明けて令和2年春、突如として世界に現れた新型コロナウイルスは、日常生活のみならず宗教界にも大きな影響を及ぼした。これまで、寺院の封鎖や参詣の自粛をお願いすることなどあっただろうか。逆に、1人でも多く、1回でも多く参詣することが佛立宗の基本だったはずだ。
ところが、令和2年の春に吹き荒れた全国的な緊急事態宣言は、生活を一変させてしまった。「密を避けろ」、「大きな音や声を出すな」、「参詣を控えろ」と、今までとは逆の指導が一気に広がった。事態は理解しているものの、それに戸惑うばかりの私たちがいた。

 住職の池本日温とて同じだ。ただでさえ「手が無い・金(財)が無い・場所が無い」と〃三無いづくし〃の妙照寺は、布教区の中でも下から数える方が早い規模。そんな小寺で、今のような混乱の最中に、講有巡教のような大きな法要ができるだろうか。不安な日々を送るうちに1年延期が本庁から告げられた。
 ところが、1年経っても状況は変わらない。この感染症はこれまでとは違う。今年に入っても波を繰り返しながら一向に終息が見えない。むしろ拡大している状況。それでもやるしかない。今年に奉修された他の布教区の巡教を調べると、どこも小規模でひっそりと勤めている。
しかし、そうではなくこんな時だからこそ意気の揚がる精一杯の法要がしたい。でもどうすればいいのか。夜も眠れず悶悶とする日温。そこへ講有巡教とは全く別の企画で動いていた布教区薫化会の役員から声が掛かった。

「インターネットの中継をやりましょう。それも単なる中継ではありません。ZOOMと言うWEB会議システムがあります。これなら別会場にお参りのご信者様の様子を御講有からもご覧いただけます。お互いに声を掛け合うこともできます。まるで隣室で参詣しているような臨場感が出ます。宗門でもネット中継をされている寺院は多いけど、双方向で中継されているところは見た事がありません。我々がやってみましょう、きっと、成功します!」
 この一瞬、日温の前に光が差し込んだ。「よし、やってみよう、挑戦してみよう。ネットを駆使する若い教務や信者に任せて、盛り上がる法要を勤めよう」。こうしてベテランと若手信徒、さらに若手の全教務が一丸となって、中国布教区・講有巡教、準備ご奉公の幕が開いたのだった。

 迎えた当日、10月17日は前夜からの雨が早朝に上がった。最高の秋晴れの中、管内10ヵ寺のご住職、教務と代表信者が本堂へ。やがて、妙照寺に通じる1本の急な坂道を登られる御講有車をお出迎えに境内に出た頃、ホテル倉敷アイビースクエアの大会場には近隣の寺院から100名を優に超える信者が集まった。
そして、コロナ制約下でお参りできない布教区内のご信者は、自坊の本堂で(2ヵ寺、25人)、また自宅で(約80人)、または病室のベッドの上で(若干人)、同時刻にお参りをした。

 「私は今、ガンと闘っていますが、病室で勇気をいただきました。ありがたい法要でした」「普段は遠くでしか拝見できない御講有のお姿を、画面ですが非常に近くで拝めました」「御法門もはっきりと聴聞できました」「帰宅してから何度も何度も繰り返し視聴ができて、ありがたい法要でした」などの感想が、御会式終了直後から何件も寄せられた。

 無事に、やっと終わった・・・。「皆で挑戦すればできる、専門家がいなくてもできる」という確信と喜びを得た。中でもうれしかったのは、いつも不満の出る「音」を5本のマイクで調整して配信し、「今回は心地よいお看経ができました」と感謝されたことだ。これで、コロナ禍を乗り越えた講有巡教ができたと、日温の目に熱いものがこみ上げてきた。
 小さい倉敷妙照寺であっても、持てる力を出しあい、工夫を重ねて、皆の一生の思い出となる講有巡教を、以上のように無事に勤める事ができた。さらにありがたいことに、3年先の次回の巡教を見据えて、自信を得た若い人たちは新たなスタートを切った。おそらく、これからも歩みが続くことと期待する。

 最後に、布教区各寺院への案内や、宗門ホームページでのご披露、そして、佛立新聞の記事掲載など、宗内の方々にご協力をいただきました事を、深く御礼申し上げます。また、全面的に協力をしてくださった、ホテル倉敷アイビースクエアの関係者各位に謝意を表し、拙いこのノベル風記事を終えます。ありがとうございました。(N・O記 日温監修)

 なお、QRコードから講有巡教ダイジェスト映像をご覧いただけます。