ほんもんぶつりゅうしゅう
2019年02月01日
下種結縁として地域福祉活動に力を入れる 佛立ソーシャルワークの取り組み お寺を学習支援と子どもの居場所に提供 第5支庁常住寺住職 高野清純
ありがとうございます。
第5支庁・東京中央布教区・常住寺では、下種結縁のご奉公として、地域の福祉活動に力を入れております。
活動内容は、子どもたちへの学習支援と、子どもたちの居場所(子ども食堂)を中心に、1人暮らしをしている高齢者のお宅への訪問、老後と死について不安を抱えている方々へのケア、東京都北区の文化教室での「仏教のお話し会」など多岐に亘っております。
その軸となる活動が、学習支援と子どもの居場所です。本稿は、この活動を中心に、地域の下種結縁ご奉公について述べさせていただきます。
 学習支援の団体名称は、
てこLa寺(てこら・てら)と申します。開導聖人の御指南書「てこのかたま」が語源です。「てこのかたま」は「手習い子の道具箱」という意味です。
子どもがしっかり勉強できるように、親は子どものカバンの中まで気を配って愛情を注ぐ。そんな様子をご指南書のタイトルから連想しつつ、団体名にいただきました。
活動に携わるきっかけは、地元の調剤薬局の社長と町会長からお声をかけていただいたことがご縁でした。3者で度々会合し、「支援を必要としている子どもたちのために何か活動をしたい」と話し合い、「学習支援」と「子どもの見守り・居場所」を作ろうということになりました。その話に東京都北区社会福祉協議会が乗って下さったので、行政の支援の下、活動が始まる事になりました。
社協を入れた話し合いは、平成28年2月に初会合が行われました。同年4月、企画原案ができ、準備が始まりました。同年8月、3日間に亘りプレ開催。同年11月には個人情報の取り扱い許可を取得して、12月7日より、常住寺を会場として、本格的に学習支援と子どもの居場所づくりの活動がスタートしました。開催日は、毎月第1・第3水曜日の夕方4時半~夜8時です。
てこLa寺(学習支援)は、地域の元教師や現役塾講師、町会役員、PTA役員、小僧の同級生などが役員を勤め、学生ボランティアの方々が参加して行われています。子どもと保護者と3者面談をした上で学習の仕方を決め、ボランティアの方々と子どものマンツーマンでお勉強をしております。
てこらCafe(子どもの居場所・食堂)は、地域の子どもたちに安心できる場所を提供し、共に過ごし、見守る活動です。限られた時間ですが子どもたちと一緒に過ごし、食事も無償提供して共に食べるという形で行っています。
食事は毎回カレーライスです。常住寺と言えばカレー。そういうイメージが地域に定着しています。調理は常住寺の婦人会が、約85人分を作って下さいます。
子どもの居場所には、地域の子どもたちが口コミで集いますので、不登校の子どもたちも自然な形で、誘われるかのようにやってきます。また学校の先生にとりましても、不登校の児童と会える貴重な場になっており、小学校の担任の先生2~5師が毎回参加されて、子どもたちと一緒に食事をして、遊んで、お帰りになります。
またありがたいことに、先般、小学校の先生2師と不登校の生徒を含む数人の子どもたちが、東京中央布教区のキャンプにご参加下さり、共にお看経をあげて、共に過ごしました。この様に、小僧たちが先生と生徒を結ぶ一助を担うことができています。そして、その場所は常住寺であり、またお看経をあげる場面であったりするのです。
やがてこの活動が地域で大きく評価されるようになり、教育委員会、学校、自治体とも更に連携が深まりました。なので各方面で自然と、常住寺のシンパが大勢できました。「常住寺は、私が思いを込めて福祉活動をしている大事な場所」―こんな風に親しみを持って下さる方々が常住寺の周辺、数分圏内に大勢できました。
これは意図してやったことではありません。しかし、これを昭和30年代から組織を挙げて意図的にやった新興宗教教団があります。それが現在、ウチの地域では、そういう集団のお孫さん、ひ孫さんたちが常住寺に集ってきて仲間たちと楽しげに遊んでいます。
一緒に仲良くカレーを食べて、大人たちから世話を受け、安心して、常住寺を自分の居場所にしているのです。ですから彼らは常住寺に大きな親しみを感じてくれています。こういうご縁は、弘通の大きな手がかりとなるハズです。
そのように、ここ数年、人の流れや勢いに乗って物事が巧く進んで行くのを肌で感じる機会が度々ありました。当時、個人的なお教化が10戸成就するご利益もいただき、人が人を呼ぶのだという事を体感しました。
いま行っている一連の活動の中に「ご弘通が伸びゆく手がかりがきっとある」「ウチの地域で、本門佛立宗は素晴らしいと世間が評価するような流れができる」―そう思えてならないのです。
本稿のタイトルは「佛立ソーシャルワーク」です。これは、小僧が造語しました。ソーシャルワークとは、辞書には「社会的な問題の解決を援助するための社会福祉の実践活動」(三省堂・大辞林)と記載されています。
今、行政や教育、自治体など地域の福祉に係わる人たちと親しく交流して感じることは、この方々の思考や言動は、小僧が尊敬する篤信のご信者方と同じだということです。その、他人のために良かれと務めるその姿に御題目が備われば、もうそのまま、良きご信者と同じだと感じます。
お役中さんは、人々にご利益を伝えて、不安を除き安心を与えようと志してご奉公されています。身命財を惜しまず、不惜身命のご奉公のお姿があります。それと重なって見えるのです。
御題目を伝えて人を助けようとする人は、もし目の前で倒れている人を見つけたら、きっと手を差し伸べることでしょう。知らんふりをすることはないハズです。地域の人々は、手を差し伸べることを積極的にやっています。そこに、御題目の尊さを加えてもらおうと思うのです。きっと、そうやって、想いが重なると信じます。
昨年・平成29年12月に東洋大学社会学部の教授と知り合いました。グリーンツーリズムの権威です。教授のご提案で今年の8月、常住寺本堂にて討論会を行いました。
「世の中はお金が大事か? 生きがい、思いやりが大事か?」という異なる考え方を、教授のゼミ生たちが二手に分かれて討論しました。このチームに、両親の居ない子ども、不登校や学習障害を持つ子どもたちを入れてもらいました。
教授主導で討論会が始まると、普段は勉強に全く興味を示さない子どもたちが、進んで手を挙げ発言し出しました。教授の指導力に惹かれて、空気の教育を受けたのです。その場に染まって、熱心に授業を受けていました。この時、この様子をご信心に重ねました。
それは「御導師のお徳を頂戴して」ということです。ご薫陶をたまわるとは、正しくこういうことを指して言うのだと感じました。一生懸命なご信心前が、他人を感化する。強信の影響を受けてご利益のいただける篤い信心前が育まれるのです。そして、御法様と人を結ぼうとする。ご信心と人とを繋ごうとする。お役中の尊いお姿は、佛立ソーシャルワークと表現できるでしょう。
福祉から弘通へ。本来の救いを伝えるためにも、今後も張り切って様々な活動を行い、それらを通じて、世間にアプローチして参る所存です。