ほんもんぶつりゅうしゅう
2020年01月01日
海外弘通だより~台湾編~ 連綿と続く日本人物故者慰霊法要 宗門の新たなページ開く 八田與(はったよ)一(いち)氏の回向
台湾教区講有巡教
昨年11月9日から13日にかけて、本門佛立宗・台湾教区への講有巡教が実施され、台北佛立寺高祖会ならびに台北地区と烏山頭(うさんとう)ダムでの日本人物故者慰霊法要を講有上人に奉修いただきました。また、当番支庁である第10支庁をはじめ日本からも多数の教講が随行団参させていただき、台中地区と高雄地区では、三宅日善第10支庁長奉修のもと日本人物故者慰霊法要が執り行われました。

本門佛立宗と日本人 物故者ご回向の歴史
今年も宗門としては49年目、48回目の日本人物故者慰霊法要が執行されました。連綿と続けてこられた報恩と追善の一座です。台北第一殯儀館での慰霊法要の中では、宗門を代表して吉田日景弘通局長のご挨拶があり、台湾と日本、台湾人と日本人、ご遺骨の収集、そして本門佛立宗との関係。長い歴史と積み重ねられてきた報恩と追善の営みについて述べられていますので、一部を省略し掲載させていただきます。
「ありがとうございます。毎年恒例の、日本人物故者慰霊法要にあたり、参列の皆さまにご挨拶を申し上げます。ご承知の通り、第2次世界大戦が終わるまでの50年間、台湾総督府によって統治されていた台湾には、戦前は40万人を超える日本人が住んでいました。終戦後、それら日本人が引き揚げて、この国に残された日本人物故者の遺骨は、日本人女性の野沢ムメさんと結婚された台湾人、野沢六和さんをはじめとする、篤志家の奉仕によって守られます。
今、その概略を申し述べますと、昭和22年、野沢さんは農作業中に日本人の遺骨が入った白木の箱を掘り当てます。その土地からは、その後も500名程の遺骨が見つかり、当初はご自宅に持ち帰って安置をされていましたが、その後各地の日本人墓地が荒れて遺骨が散乱しているとの話を聞くにつれ、『このまま放置するのは忍びない』と、一念発起して手弁当で台湾全土を歩き、日本人物故者の遺骨の収集を始められるのです。
やがて、昭和32年に入って日本政府が本格的な調査を始めると、野沢さんも大使館嘱託として遺骨収集に参加され、この作業が完了した昭和36年には、2万人近い遺骨を確保することができたといいます。この遺骨は、台北の中和寺、台中の宝覚寺、高雄の共同墓地の3ヵ所に分けて安置され、最初の慰霊法要がこの年に行われました。ちょうど今から58年前のことで、以後、この慰霊法要は台湾人の僧侶によって、10年近く続きます。
昭和45年、私たちの本門佛立宗では、当時の御講有、小山日幹上人のご指示により、終戦時に台湾の5つの都市にあった道場の現在と、残された信徒をはじめとする日本人の遺骨の状況、そして宗門としての慰霊法要を行う可能性についての本格的な調査を行います。結果、当時の日本大使館の協力を得て、同年、本門佛立宗による第1回目の慰霊法要が執行され、昭和47年を除いて、現在まで毎年、日本交流協会、台湾日本人会、台湾協会と合同で、日本人物故者の慰霊法要が営まれるようになるのです。
その間、台北中和寺にあった遺骨は台中の宝覚寺に移され、台北での法要はこの第一殯儀館で行うようになるなど、若干の変遷はありますが、我が宗門としては48回目を数える令和元年度の法要を、宗門の最高指導者、講有・大僧正髙須日良上人のご唱導をいただいて、本日、無事に執行できますことは、これも台湾の発展に尽力し、この地に眠る先達や、その慰霊を今日まで紡いでこられた諸先輩方、関係諸機関のご苦労の賜物と、深く感謝を申し上げる次第です。」

歴史の一ページ開く
「台湾で最も尊敬される日本人」―八田與一技師。八田氏の偉大なる功績は、烏山頭(うさんとう)ダムの完成によって、台湾人の生活と心を豊かにしていきました。そして、妙不可思議な御縁がつながり、現在、八田與一氏の直孫である八田修一さんが本門佛立宗のご信者なのです。これも長年に渡る台湾での日本人物故者ご回向の功徳のおかげだと確信しています。
令和元年11月12日、澄み切った晴天のもと、宗門として初めて、烏山頭ダムの八田與一氏の彫像・八田與一氏ご夫妻のご霊前にて講有上人のご唱導をいただき、上行所伝の御題目によるご回向法要の一座を奉修することができました。八田與一氏の銅像の背後に御本尊がご奉安された光景は、まさに宗門の新たな1ページが開かれた瞬間でした。
その後、講有上人と参詣者は外代樹(とよき)夫人が身を投げた放水口と殉工碑を訪問し、ご回向いただくことができました。今回のご回向をきっかけに、さらなる宗門の隆昌発展、台湾と日本のさらなる友好親善につながることを願っています。
最後に、今回、烏山頭ダムでの慰霊法要にご協力をいただいた八田修一さん、台湾日本人会の徳光重人氏、嘉南農田水利会の皆さまには心より御礼申し上げます。