ほんもんぶつりゅうしゅう
2016年01月12日
北九州布教区「東日本大震災 復興支援助行」を実施 —現地を訪れる必要性を痛感する—
第10支庁・北九州布教区では、昨年10月3〜5日、東日本大震災復興支援助行を実施。7回目を迎えた今回は、いわき妙運寺高祖会の奉修導師・博多光薫寺の小林信翠住職、随伴参詣のご信者とほぼ同一の行程で、妙運寺ほか郡山遠泉寺、仙台妙護寺、石巻耀護寺の4ヵ寺の訪問となり、特に妙運寺、耀護寺の2ヵ寺で伺った復興状況を報告させていただく。

 いわき妙運寺の高祖会は、第二世日昱上人御27回忌、第三世日茨上人御13回忌等の併修で盛大に厳修されたが、秋山現信住職からは「3・11よりも4・11(福島県浜通り地震)で受けた被害のほうが大きかった」など震災当時の話、今も収束のめどの立たない福島第一原発事故についてのお話をいただいた。

 市内の別会場でのお供養の後、秋山住職の案内で、現在もほとんどの住民が避難している富岡町を訪問。駅前でご回向の後、周辺を視察。参加した何人かは昨年も同地を訪れているが、富岡駅の駅舎は撤去され、線路をはさんで海寄りは汚染物の入ったフレコンバックが大量に積み上げられ、そばには真新しい処理場の建屋があった。陸地側の駅前周辺は店舗や住宅、車両が津波の被害を受けた時のままの状態で放置されている。息を呑む光薫寺の団参者たち。県の世論調査によると現在でも約半数の県民が放射性物質の影響による健康への不安を抱えているという。「ご信者も含めて、放射性物質に対してきめ細かく気をつけている人と『しょうがない』と半ばあきらめている人とに二極化している状態ではないか」と語るのは妙運寺の森川幸夫局長。

 福島第一原発から直線距離で約50キロの妙運寺の方々は、原発事故以降、御供水や飲料水にはペットボトルの水を利用する生活が続いている。宗門の取り組み「ワンコイン to ワンボトル」活動の支援金で、県内7ヵ寺にペットボトルの水が配られたが、妙運寺では下種者を中心に、ご信者でない方にもペットボトルの水を提供している。森川局長は「特に幼い子どものいる家庭では、安全な飲料水の確保が欠かせません。『お寺からの水は安心して飲めるのでありがたい』と感謝されている」と話す。こうした話を聞くと「ワンコイン…」の活動は、一過性のものでなく、息長く継続していくことの必要性を感じさせられる。

 4日の妙運寺に続いて仙台妙護寺に参詣の後、石巻耀護寺を訪ねた。昨年まで被災時の様子をとどめていた門脇地区は復興の工事が始まり、昨年まで行っていた門脇小学校近くでのご回向は、少し離れた被災したご信者宅跡地でご回向。その後、耀護寺でお助行の後、同寺ご信者・榊美紗子さんの体験談、笠原信三局長の復興に向けた取り組みの報告を伺った。小さいお寺ながら、被災前よりも信徒数を増やし、昨年には長年の計画だった信徒会館を完成させた耀護寺は、この前日の高祖会の日に壮年会を結成させた。今後は東北南部壮年会の一員としてのご奉公も期待される。

 榊さんは震災で両親ら家族3人を亡くされ、その被災体験を全国各地で発表し、一般メディアでも取り上げられている。当日も住居を失い困っている人々への公共の支援が遅れている話があり、被災地が復興している部分は伝えられるが、復興していない部分は伝えられていないことを知ってほしいと榊さんは述べた。

 震災から4年半が過ぎた。被災地から離れている者は「復興」という報道や言葉が耳に入るたびに、被災地が等しく立ち直っていると思いがちだが、榊さんが言うように実際は違う面が数多くある。また行く先々で「現在の(被災地の)状況を自身の目で見てもらいたい」という声も聞いた。我々がご信心を通じて、どんなお手伝いができるのかを改めて考え直すためにも、被災地から離れている者こそ、現地を訪れる必要性を痛感させられた今回の支援助行であった。

(文責・松本信慈)