ほんもんぶつりゅうしゅう
2018年08月01日
海外弘通だより~サンマリノ編 『トランクの中の日本』を特別公開  世界遺産登録の国会議事堂で異例の開催
2018年6月29日より7月29日までサンマリノ共和国で京都佛立ミュージアム主催『トランクの中の日本 ~戦争、平和、そして仏教~』展を開催させていただくことができました。これは3年前、京都佛立ミュージアムで終戦70年の記念展示として同企画展を開催した際、「サンマリノ・ニッポンまつり」実行委員会・古堅裕子氏、駐日サンマリノ共和国大使マンリオ・カデロ氏にご協力をいただいたことに起因しています。
サンマリノ共和国は、世界最古の共和国でありながら軍隊を持たず平和の大切さを保持し続けている国。カデロ大使はオダネル氏の写真に感銘を受け、京都佛立ミュージアムに平和のメッセージを送ってくださいました。
また、この際、日本の天正遣欧使節顕彰会が私たちの展示に大変共感くださり、ローマ法王へ献上品を送るにあたり、当企画展のリーフレット、館長・長松清潤の名刺、手紙、ジョー・オダネル氏の写真集『トランクの中の日本』(小学館)を入れていただきました。
それから3年が経過した本年元旦、ローマ法王フランシスコが、長崎原爆投下の被害者の姿をとらえた1945年の写真をカードに印刷して配布するよう指示を出したと報道されました。写真は死亡した弟を背負いながら火葬場で順番を待つ1人の少年の姿を捉えたものでした。第二次世界大戦末期、長崎に原子力爆弾が投下された直後、米海兵隊の従軍カメラマン、ジョー・オダネル氏が撮影したものです。まさに京都佛立ミュージアムの写真展の中心、法王への献上品の中に入れた写真でした。
バチカンが配布した写真には「幼い少年の悲しみはただ、血のにじんだ唇をかみしめるその身ぶりの中にのみ表現されている」というキャプション、裏面には法王の署名と「戦争が生み出したもの」という言葉が添えられていました。
終戦70年 特別展示『トランクの中の日本 ~戦争、平和、そして仏教~』と題した佛立ミュージアムの展示会は、オダネル氏の日本上陸から様々な日本人たちとの出会い、広島や長崎の爆心地、彼の心の変化を追体験していただくことを主目的としています。
敵と味方を隔てる境界に気づくこと、その境界が実は妄想や幻想に過ぎないことに気づくこと。オダネル氏の心の変化は仏教の説く境界の曖昧さに相通じるものがあります。敵と味方の境界、宗教や民族の壁を超えて、平和を希求する企画展です。
サンマリノ共和国での特別開催は文化省・歴史省の絶大な協力のもと、世界遺産に登録されている国会議事堂(政庁・プブリコ宮)を会場とする異例の開催となりました。これは平和を希求し保持に努める同国の強い意志の表れでもあります。
6月26日、日本から館長・長松清潤師と松本現薫師が展示写真33枚と仏教パート5枚を含むパネル約40点などを搬入、準備を開始しました。26日早々から現地関係者や作業員の献身的な作業のもとで28日には展示が完成。サンマリノ共和国用に用意したパネルは全てイタリア語、英語で日本語はありません。
6月29日午前中、同国の執政官(大統領に相当)2名が展示開館に先立ち展示を鑑賞し、長松館長が説明を行いました。館長は、オダネル氏の日本上陸から様々な日本人たちとの出会い、広島や長崎の爆心地、彼の心の変化について、同時に仏教という視点から宗教を超えて他者の命を慈しみ、平和を希求するというメッセージについて語り、さらに最後のパネルでは開導聖人の紹介や「俗画さとし草」を紹介し、執政官からも感動の言葉を得ました。
引き続き、国会議事堂前のリベルタ広場にて開催を記念しテープカットが行われました。テープカットには文化教育大臣マルコ・ポデスキ閣下、マンリオ・カデロ大使、特別展の協賛に加わった蓑田秀作氏(一般財団法人 100万人のクラシックライブ代表理事)、そして館長・長松清潤師がハサミを入れ、関係者や一般観覧者と共に開催を祝いました。  (つづく)