ほんもんぶつりゅうしゅう
2012年01月01日
第1回[2012年1月号]

門祖日隆聖人物語 第1回

お誕生

不思議な夢

 門祖日隆聖人のお父さんは桃井右馬頭尚儀、お母さんは益子というお方で、お二人のご長男として越中射水郡浅井嶋村(現・富山県高岡市郊外)にお生まれになったんだよ。  お母さんは熱心な御お題目のご信者で、朝夕の御題目口唱をけっして怠らない方だったんだ。まだ門祖聖人がお生まれになる前、至徳二年(一三八五年)一月十五日の夜、お母さんは夢を見る。その夢とは、光り輝く玉を手に持ち、香り高い衣を着た僧侶が現れ、「この玉をあなたに差し上げる!」という不思議な夢を見たんだ。  また、お父さんも同じ夜、身なりを整えた高貴なお方が、「この刀をあなたに授けます、何かの時に守り刀として使いなさい」と、刀を譲り受ける夢を見たんだ。  翌朝、二人は不思議な夢のことを話し合ったが、これは、きっと良いことの起こる前兆と大変喜ばれたんだ。その後、お母さんは門祖聖人を身ごもるんだよ。

数々の奇瑞

 門祖聖人のご誕生までの十ヵ月の間、世の中は天災や争いもなく平和で、お母さんの部屋には良い香りが漂い、お屋敷の屋根には紫色の雲がたなびくなどと、めずらしいこと(奇瑞)が続き近所の人々も、「これはえらいお方の誕生の知らせに違いない!」と噂する程ほどだったんだよ。
お誕生のおり自然に湧き出たご霊水(法華宗本門流 富山・誕生寺)
お誕生のおり自然に湧き出たご霊水(法華宗本門流 富山・誕生寺)

(法華宗本門流 尼崎・本興寺 蔵)
  そして、至徳二年(一三八五年)十月十四日の朝、お屋敷の庭に突然、霊水が湧わき出たんだが、ちょうどその時刻に、うぶ声も高く門祖聖人はお生まれになったんだ。  門祖聖人ご誕生の直後、あるご婦人がお屋敷を訪れ、「今日お生まれになった若君の御世話をしにやって来ました」というんだ。お父さんは大いに喜ばれ、このご婦人を門祖聖人の乳母にされたんだ。  さらに、この婦人に続いて白髪の老人がやって来て、錦の袋に入った刀を取り出し、「ただ今生まれた若君にこの刀をお授さずけ申す!」と刀を渡すと、あっという間に姿を消してしまったんだ。  お父さんは、この刀をじっと眺ながめて、「あの夢の中で授けられたものだ」と喜ばれ、そして、その刀の銘が「長一丸」と刻まれてあったために、それにちなんで男の子の名前を「長一丸」としたんだよ。

お誕生日のご因縁


  門祖聖人の十月十四日のお誕生日にも不思議なことがあるんだ!  仏様は二月十五日にお亡くなりになり、それから二一七一年たった承久四年二月十六日にお祖師さま(日蓮聖人)がお生まれになられた。  そしてお祖師さまは、弘安五年十月十三日にお亡くなりになられたが、それから一〇四年後の十月十四日、こんどは門祖聖人がお生まれになられたんだよ。
 もうわかったかな、年代は違っても、不思議とお亡くなりになった日とお誕生の日が続いているんだ。仏様、お祖師さま、門祖聖人と不思議なご因縁を感じるねぇ…。
 
門祖ご誕生の際のおはなし